足立区に入り、梅島駅前を過ぎたあたりで「ベルモント公園」という看板をみつけた。オーストラリア・ベルモント市との友好親善のシンボルとして作られた公園なのね。なるほどそれで芝生に羊さんの銅像が芝生のあちこちにいるわけか。園内はちょうど薔薇が満開。ホッとひと息つく。同時に「公園の放射線対策」と書かれた張り紙に、否応なくいまの日本を感じたりもする。
梅島から竹の塚に進むにつれ、昭和な空気がただよってきた。たとえば食堂の店先では、食品サンプルのナポリタンを巻き付けたフォークが宙に浮いてる。ホビーショップにはガンプラと鉄道模型の箱が積み上がっている。駄菓子屋「ひばり」の名物は「元祖たこせん」だそうだ。たこ焼きをえびせんで挟んだもの。食べてみた。たこ焼きとえびせんの味がした。駄菓子屋の店先にはベンチがあって、小学生がたむろしてる。和むわあ。
きわめつけは町の本屋さん。店頭の日覆いは年季が入りまくり、日に焼けて変色してるばかりかかなり大胆に破れてる。店番してるのはお約束どおり、ちんまりしたおばあちゃん。雑誌がいくつか並んでるほかは、店の半分がエロ本…。思わず『別マ』最新号を買って、ばあちゃんと立ち話。息子夫婦の話だのなんだの、結果的に小一時間、ばあちゃんの四方山話を聞くことになったのであった。気がつけば、傾きかけた黄色い日差しが並んだ本のうえに差し込んできてら。このまま話し込んでるわけにもいかない。立ち去るのがなんだか申しわけない気持ちになりつつも店を出た。
本屋さんからしばらく行ったあたりで、リヤカーを水洗いしてるおじさんに会う。
え、これってもしかして魚の行商ですか? 「最近はこの辺でもみんなスーパーに行くけどね。そこはそれ、買ってくれる人はいるもんだよ」にやっと笑う。そうなのか。リヤカーの魚屋さんって、幼稚園のころに見かけたきりだったわ。懐かしい。
いい加減、足もつらくなってきた。草加駅まできたところで日が暮れた。よし、とりあえず埼玉県に入ったぞ。